2020年(令和2年)度の確定申告から
青色申告特別控除65万円控除を受けられなくなるかもって本当?
「電子申告」または「電子帳簿保存」をしないと控除額が65万円から55万円、
すなわち10万円下がってしまいます。
筆者は、会計事務所で7年間勤務し、毎年100件以上の確定申告を実施してきました。確定
申告の専門家としての経験と知識をシェアしていきます。
65万円の青色申告特別控除を受けるための準備と手続き
税制改正により、2020年(令和2年)分の確定申告から、
65万円の青色申告控除を受けるためには、
【従来の要件】+【電子帳簿保存法の承認書類の提出】または【e-taxによる電子申告】が必須となりました。
まず、この「65万円控除を受けるためのフローチャート」をご覧いただき、ご自分が65万円の控除を受けられるかご確認ください。
「このままでは65万円青色申告特別控除が受けられません」となった方、
下記のA~Dの4つの選択肢の中から一つを選択することになります。
選択肢それぞれの「条件と必要な準備」を一覧にまとめました。
名称 | A.【電子帳簿保存方式】 | B.【マイナンバーカード+ICカードリーダーライターでe-Taxによる電子申告方式】 | C.【マイナンバーカード+NFCスマホでe-Taxによる電子申告方式】 | D.【ID・パスワードでe-Taxによる電子申告方式】 |
条件 | 電子帳簿保存法に対応している会計ソフトを使っている | ①マイナンバーカードを持っている | ①マイナンバーカードを持っている | 特になし ※ただし、マイナンバーカードが普及するまでの暫定処置なのでいずれはなくなる |
②カードリーダーライターを持っている | ②NFCスマホを持っている | |||
必要な準備 | 税務署へ届出期限までに出す |
・マイナンバーカード |
・マイナンバーカード ・NFCスマホにアプリをダウンロード ・PCに利用者クライアントソフトをインストール |
・税務署に本人確認書類を持参し、ID・パスワードを発行してもらう |
申告方法 | 郵送・持参 | 電子申告 | 電子申告 | 電子申告 |
続いてそれぞれの手続きと準備を見ていきましょう。
A.【電子帳簿保存方式】
2つの要件のうち【電子帳簿保存法の承認書類の提出】の要件を満たす方法です。
申告方法は「電子」または「紙」のどちらでもOKで、帳簿を【電子帳簿】として保存することを税務署に承認してもらうことで65万円の控除を受けられます。
対応している会計ソフト
大半の方が、会計ソフトを使用していると思いますが、自分が使っているソフトが「電子帳簿保存法」に対応しているか分からないですよね?
電子帳簿ソフト法的要件認証製品一覧から電子帳簿保存法に対応しているソフトを確認しましょう。
対応している方は、パソコンの設定を確認し、届出を作成していきましょう。
対応していなかった方は、他の選択肢へ移動しましょう。
会計ソフトの設定
会計ソフトを使用している方、前年度の確定申告が終わり、「データ繰越」を実施すると思います。(下記は弥生会計の場合)
その際に「電子帳簿保存をしますか」ということを聞かれると思いますが、
「電子帳簿保存をする」を選択します。(会計ソフトによって違うと思います。)
もし、繰越の際に「電子帳簿保存を行わない」を選択して繰越をし、
新年度の入力を始めてしまった方は、残念ながら再度「前年度データの繰越」をし、「電子帳簿保存を行う」を選択する必要があります。
「全部入力し直しか」と思った方、大丈夫です。
「既に入力した仕訳データ」だけエクスポートしておいて、再度「前年度データの繰越」をし、仕訳データのインポートをすると入力したデータは無駄になりません。
※お使いの会計ソフトによって確認が必要です。
繰越時に「電子帳簿保存をする」を選択した方は、データの準備は完了しています。
続いて税務署長へ電子帳簿保存の申請をしましょう
電子帳簿保存の申請
国税庁HPの国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請から申請書と記載例をダウンロードし、必要事項を記入し、税務署へ提出していきましょう。
選択する申請書は「国税関係帳簿の電磁的記録による保存等の承認申請書(市販のソフトウェアのうちJIIMAの認証を受けているもの)」です。
本来は、「帳簿の備え付けをする3か月前の日までに」となっているので、令和2年分の承認申請書は、令和1年9月30日までが提出期限です。
しかし、令和2年度に限っては、提出期限が令和2年9月30日までに延長されているので、間に合うように提出しましょう。
税務署から承認されたら準備完了です。
確定申告
例年通り「印刷して提出」を選択し確定申告をしましょう。
次は、マイナンバーカードを持っている方の準備と手続きです。
B.【マイナンバーカード+ICカードリーダーライターでe-Taxによる電子申告方式】
2つの要件のうち【e-taxによる電子申告】の要件を満たす方法です。
帳簿は「電子帳簿」として承認されているかどうかは関係なく、マイナンバーカードとICカードリーダーライターを使って、「e-Taxによる電子申告」で行うことで65万円の控除を受けられます。
電子申告は国税庁のホームーページからPCまたはスマホから行います。
マイナンバーカードとICカードリーダーライターだけ準備すればOKです。
次は、ICカードリーダーライターの選び方について説明します。
ICカードリーダーライターの選び方
公的認証サービスに対応しているか
確定申告は、マイナンバーカードを読み取り、本人であるという公的認証を行う必要があります。
ICカードリーダーの中には、公的個人認証サービスに対応しているものと対応していないものがあるので、対応しているものを選びましょう。
(マイナンバーカードに対応したICカードリーダー一覧から確認できます。)
OSに対応しているか
ICカードリーダーの中には、「Windowsのみ対応」、「Macのみ対応」という製品があるので、購入時に注意しましょう。
接触型か非接触型か
接触型とは、カードをICカードリーダーに直接差し込んで使うタイプで、
非接触型とは、カードをICカードリーダーに乗せるだけのタイプです。
おすすめのICカードリーダーライター
おすすめの4機種をピックアップしました。
マイナンバーカードに対応していることをマイナンバーカードに対応したICカードリーダー一覧で確認済みです。
1. Sony PaSoRi RC-S380【公的認証・非接触型・Window7-10】
地方自治体や法人でも使用されている非接触型のICカードリーダーライター。
安定感があり、最も人気があり高評価です。
「Suica」「楽天Edy」「WAON」などの各種電子マネーの残高チャージ、ネットでの決済の利用が可能です。価格は比較的高いですが、エラーが少なく、応用が利きます。
2. NTTコミュニケーションズ ACR1251DI-NTTCom 【公的認証・接触/非接触共用・Windows7-10、MacOS 10.12-10.15】
Windows、Macを問わず使用できる。接触/非接触共用のICカードリーダーライター。
電子マネー等のチャージや支払いはできません。
3. NTTコミュニケーションズ ACR39-NTTCom【公的認証・接触・Windows7-10, Mac 10.12-10.15】
接触型で人気のある機種です。導入しやすい価格帯なので、確定申告だけ使えればいいという方におすすめです。
4. IIOデータ ぴタッチ USB-NFC3【公的認証・非接触・Windows7-10, Mac OS 10.10-10.15】
非接触型で比較的新しいモデル。WindowsもMacも対応しており、読み取り完了時にピッと光ってお知らせしてくれるのでわかりやすい。シンプルで分かりやすいモデル。
5. Identiv CLOUD 3701 F 【公的認証・非接触・Windows7-10, Mac OS 10.10-10.15】
NFC(近距離無線通信)を搭載したICカードリーダーライターです。
マイナンバーカードのほか、電子マネーやオンラインショッピング、運転免許証、パスポートまで使用できます。
活用範囲が広いため、比較的値段は高めです。
せっかく買うなら色々使えるものがいいという方におすすめです。
PCに利用者クライアントソフトをインストール
PCに「電子申告利用者クライアントソフト」をダウンロードしインストールします。
これで準備は整いました。
確定申告(e-Taxで提出マイナンバーカード方式で電子申告)
国税庁のホームページで「e-Taxで提出マイナンバーカード方式」を選択し、
PCかスマホで電子申告をしましょう
もし、国税庁のホームページで確定申告書を作成するのが難しい方は、
会計ソフトfreeeややよいの青色申告 オンラインを使うのがおすすめです。
どちらも無料で始められて、簡単に記帳・確定申告書の作成・電子申告ができます。
C.【マイナンバーカード+NFCスマホでe-Taxによる電子申告方式】
2つの要件のうち【e-taxによる電子申告】の要件を満たす方法です。
帳簿は「電子帳簿」として承認されているかどうかは関係なく、マイナンバーカードとNFCスマホを使って、「e-Taxによる電子申告」で行うことで65万円の控除を受けられます。
NFCとは「Near field communication(近距離無線通信)」の略で、NFCを搭載した機器同士を近づけるだけで通信ができる技術のことです。
お持ちのスマホがカードリーダーライターとして使えるかどうかは、
マイナンバーカードに対応したNFCスマートフォン一覧でご確認ください。
お持ちのスマホが一覧になければ、他の選択肢を選択してください。
e-Taxによる電子申告のためのPCの準備
PCに「電子申告利用者クライアントソフト」をダウンロードしインストールします。
e-Taxによる電子申告のためのスマホの準備
スマホに「ICカードリーダーライターとして利用するためのアプリ」をダウンロードしインストールします。
これで準備は完了です。
確定申告(e-Taxで提出マイナンバーカード方式で電子申告)
国税庁のホームページで「e-Taxで提出マイナンバーカード方式」を選択し、
PCかスマホで電子申告をしましょう
もし、国税庁のホームページで確定申告書を作成するのが難しい方は、
会計ソフトfreeeややよいの青色申告 オンラインなら無料で確定申告書の作成や電子申告ができます。
D.【ID・パスワードでe-Taxによる電子申告方式】
2つの要件のうち【e-taxによる電子申告】の要件を満たす方法です。
帳簿は「電子帳簿」として承認されているかどうかは関係なく、マイナンバーカードもICカードリーダーライターもNFCスマホも必要ありません。
ID・パスワードの入手
運転免許証などの本人確認書類を持って所轄の税務署に行くと、「ID:利用者識別番号」と「パスワード」が記載された「ID・パスワード方式の届出完了通知」をもらえます。
その「ID・パスワード方式の届出完了通知」に記載されているIDとパスワードを使って国税庁のホームページで電子申告をすることで65万円の控除を受けられます。
ただし、マイナンバーカードの発行者が多くなると廃止になる方法です。
「マイナンバーカード」が忙しくて作れず、確定申告の時期になってしまった方は税務署に行って発行してもらいましょう。
これで準備は整いました。
確定申告(e-Taxで提出ID・パスワード方式で電子申告)
国税庁のホームページで「ID・パスワード方式」を選択し、PCかスマホで電子申告をしましょう。
もし、国税庁のホームページで確定申告書を作成するのは難しい方は、
会計ソフトfreeeややよいの青色申告 オンラインを使うのもいいかもしれません。
どちらも無料で始められて、確定申告書が作成できます。
簿記の知識もあって経理の経験もある方であれば、弥生会計オンラインが違和感なく効率よく記帳と確定申告書の作成ができると思います。
まとめ
【2020年度(令和2年度)確定申告】65万円青色申告特別控除の要件が変わりましたが、
引き続き65万円の控除を受けるために必要な準備と手続きについて解説しました。
改めて選び方のPointをおさらいしておきましょう。
65万円の青色申告特別控除を受けていた方が55万円になってしまうと、10万円所得が増加します。
すなわち、例えばすごくざっくりとした計算になりますが、
所得税率20%の方は、住民税10%も合わせると税率30%なので、約3万円
所得税率10%の方は、住民税10%も合わせると税率20%なので、約2万円
の増税となってしまいます。
自分がどのパターンに当てはまるかをしっかり認識し、準備・手続きをし、65万円の控除を適用させ、しっかりと節税していきましょう。
もし、国税庁のホームページで確定申告書を作成するのは難しい方は、
無料で始められる会計ソフトfreeeややよいの青色申告 オンラインをおすすめします。
どちらも専門知識がなくても記帳ができて、確定申告書が作成できます。
簿記の知識があって経理の経験がある方であれば、弥生会計オンラインをおすすめします。
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